…… TOPICS 詳細 ……


今治

文化

2017.09.30

道後に女性鬼師の息吹!菊銀製瓦

717号2ページ

瓦で屋根飾りや間接照明

 

「若い方に良さ伝えたい」菊地さん」

 26日にオープンし、話題となっている「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」(松山市)の、シンボルの一つとなる屋根飾りや、露天風呂に置く間接照明を手がけた、今治市出身の女性鬼師がいます。

 その女性とは、菊銀製瓦(菊間浜32)の菊地晴香さん(29)です。

 菊地さんは、同施設の屋根の両端に設置する飾り、「鴟尾」を今年始めに取りかかり、約5ヶ月かけ完成。鴟尾の大きさは、縦約85㎝で横は、約75㎝にもなり、製作には苦労しました。「作品が大きければ大きいほど、瓦を焼く際、完成時と焼く前の縮み幅が大きく、計算も難しい」と話す菊地さん。

 鴟尾が完成した後は、間接照明の製作に取りかかりました。松山市の市花である椿を中心に、同施設から男湯は山を、女湯は海をテーマに考えて欲しいと依頼があり、デザインを考案。菊地さんの作品は豪快さと、女性らしい柔らかさがあると好評です。「今後は若い方にも瓦の良さを伝え、興味をもってほしい」と話しています。

 同施設は、飛鳥時代の建築様式を取り入れた湯屋。また、多くの愛媛県の伝統工芸で館内を飾っています。 

 

亡き祖父の魂と技継承

 

 晴香さんの活躍の裏には、亡き祖父との厳しい修行の日々がありました。高校卒業後、祖父の壮三郎さんの元、修行を始めるも見て覚えろと、何も教えてくれませんでした。それならと作り方を見ようとしたら、「見るな!向こうに行け!」と怒られる始末。

 壮三郎さんの技術はぴかいちでしたが、厳しい男社会で生き抜いた頑固な職人気質。女性の晴香さんにできるわけがないと、最初から教えるつもりはなかったのです。晴香さんは壮三郎さんが作業場を出た後、そっと自分の作品と見比べ、見て盗む毎日が続きました。

 「祖父にやっぱり辞めたか。根性がないと言われたくなかった」と晴香さん。必死でくらいつき、技術も上がった頃、壮三郎さんは作業場に来なくなりました。

 そんな折、晴香さんに屋根瓦の棟に飾る「水板」の仕事が入りました。この図面の引き方が、どうしても分からず、途方にくれていた晴香さん。壮三郎さんが教えてくれるはずがないと思いつつ相談すると、「やってやろ」と図面をさっと引いてくれたのです。

 壮三郎さんが教えてくれたのは、この一回だけで、「祖父に助けられた。嫌いな時もあったけど、似た者同士だからかな」と鬼師の修行は続きます。

 


ページトップへ