松山
文化
2023.11.21
一広(株) 越智会長 グローバル戦略唱える
65号2ページ

グローバル戦略唱える
「社員を大切に、納税し地域貢献」
経営研究会で講演
一広株式会社の代表取締役会長でタオル美術館グループ代表の越智逸宏さんが10月9日、松山市で開かれた経営研究会(久保進会長)で「一広のグローバル経営戦略」と題して講演し、人口減少する将来の経営の在り方などを話した。
まず1歳の時、父親がインパール作戦で戦死、祖父母に育てられ、祖母の強い要望で今治工業高校に進学。高校2年の時に、産業教育振興会で優秀賞を受賞した。卒業後に大日本紡績(現ユニチカ)の入社試験でその受賞研究の作文が評価されて360人中5人の合格者に入り、同社での経験がその後の精神的支柱になったと強調。それは、22歳で200人余りの部下を持つ操業責任者に抜擢された奈良・高田工場時代。年明けに動かした機械に突然、糸が切れるトラブルが起き、多くの女子工員が泣きだすなか「全責任を取る。機械を全部止める」と指示。辞表を出す騒動になったが、原因は機械の温度を急上昇させたことだと判明。翌年明けには、温度を徐々に上げて改善でき、この対応で部下との信頼関係が築ける経験となり、今でも社員を大事にする教訓になったと振り返った。
28歳の時に祖父母を支えるために帰郷、妻と共にタオル工場を創業。朝から深夜2時まで働き夫婦で手取り16万からのスタート。糸の開口の技術を磨きB級品をほとんど出さない品質が評価されて5年後、海外のブランドタオルメーカーから最終下請けを任された。売り上げは一気に伸びて、さらに5年後には30倍の売上げを達成。常に職人として現場で機械と向き合い、物づくりにこだわり続けたことが第1創業期に飛躍した要因だと語った。
第2創業期では生産から販売まで行うSPA(製造小売業)への転換期とし、上場企業の川辺株式会社など取引先の卸売り会社2社からの経営支援の要請を受けて経営参入を決断したことが取引先を拡大させた。一方でしまなみ海道の開通1年後の2000年には、小売業の中核となるタオル美術館をオープンさせるなど自分で生産した商品を自分で売り、消費者と近づく経営が確立したと説明した。
そして、第3創業期は未来を見据えた経営だと強調。日本の人口は毎年、100万人づつ減り続けると訴え、世界市場に目を向ける必要性を唱えた。中国の大連工場やベトナム工場を生産拠点にして為替リスクを減らすことなどグローバルな経営戦略に取り組む時期だと訴えた。
最後に経営者として大切にしていることは社員を大切にして、適正な納税を行い、地域貢献することだと話して締めくくった。