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新居浜

文化

2022.07.16

刀鍛治で“己磨き”30年

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國宗鍛刀場
脱サラし無給で5年修行
藤田さん「常に真剣勝負」


8歳で脱サラし、腕一本で日本刀を生み出す刀鍛冶として生きる人がいます。その人は國宗鍛刀場(星越町)の刀鍛冶、藤田國宗さん(58)です。刀で己の心を磨き30年がたった今、再現できないと言われるほど難しい鎌倉時代の美しい刀の制作にも日々挑んでいます。

 小さい頃から刀が好きだった藤田さん。大学卒業後、28歳で脱サラ。奈良の刀匠、河内國平さんに弟子入りしました。
 入門し2年間は掃除と草抜き中心で、給料なしの厳しい世界。先輩の知識や技術を見て覚えました。「仕事を見て覚えろというが、多くの人は眺めている。見ると眺めるは違う」と藤田さん。気を抜く暇はなく、毎日が真剣勝負。日本刀の制作技術だけでなく、日本の歴史や文化も学びました。
 刀鍛冶の資格取得に通常8年ほどかかるところ、藤田さんは4年半で文化庁が主催する美術刀剣刀技術保存研修会に参加し、見事一発合格。
 刀鍛冶として帰郷したのは33歳の時。鍛冶場で、刀の材料となる鋼を熱する火床が1300度に達する中、鋼を何度もたたき品質を均一に。その後、彫りや研磨など様々な工程を全て一人で行い、美しい刀に仕上げます。
 寝ても覚めても刀一筋。マニュアルはなく全て口伝えで知った技や知識を繰り返し試し、現在は刀の中で最も難しいと言われる鎌倉時代の刀の制作に挑んでいます。刀の鑑定家として全国的に有名な高山武士先生に「重要美術品と並ぶ刀を作れるように」と言わしめるまでの存在に。
 「刀のことを夢の中でも考えていると、ふとした瞬間に閃く。刀を叩き磨きあげると共に、己の心も磨き上げる」と藤田さんは優しく刀を見つめます。

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