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今治

生活

2024.05.25

着物よしだや商店 1世紀半の“雅” 5月末 惜しまれ閉店

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今治市で1世紀半もの間、着物の雅を提供し続けて来た「よしだや商店」(吉田宏社長・本町3)が今月末、閉店する。しかし、長女が帰郷し、この秋、焼き菓子・パン屋の店を開店、屋号を復活させる。


長女がパン屋で屋号継ぐ




 着物の「よしだや商店」は、明治6年、初代の吉田直一さんが当時、中心商店街だった現在の地で開業。その後、3代目を継いだ宏さんの父親の哲雄さんは、昭和41年早逝(そうせい)し、4代目は哲雄さんの弟、紳二さんに渡された。宏さんは、小学4年生の時、母親も亡くしており、4代目の叔母、スマエさんが母親代わり。宏さんは、叔父や叔母が誠実に商いに打ち込む後ろ姿を見て成長した。大学を卒業後、大阪の大手流通店での修業を経て、平成8年29歳で5代目に就任した。
 当時も着物は斜陽産業。しかし、宏さんは、
持ち前のアイデアと行動力で、毎日、夜遅くまで家を訪ね歩き、お客さんを開拓。数年後には、売上げは3倍、古い店も住宅を兼ね鉄筋3階建に新築するまでに拡大した。
 また、「着物を着る機会も増やしたい」(宏さん)と展示会も頻繁(ひんぱん)に開催。ハワイの日本文化パーティーにお客さんを連れ参加したことも。本町商店街でも、町おこしの中心メンバーとして活躍し続けた。
 しかし、2021年11月に体調に異変を感じ、その後も健康が戻らず、昨年末に、5月末での閉店を決意した。「健康への自己管理が足らず反省しています。長年のお客様に、ただ感謝です」と宏さん。閉店を聞いた得意客らも一様に驚き、その一人、砂田恵さん(65=五十嵐在住)は「母から娘まで親子3代に渡りお世話になり、ハワイ旅行では、母との貴重な思い出も作ってもらった」と残念がる。
 「よしだや」の歴史は今年で151年目。この「両親らの想いの詰まった屋号は消せない」と正月の家族会議で手を挙げたのが長女の真里さん(32)。大阪のパティシエ専門学校を卒業した真里さんは、東京で洋菓子とパンの店に務め、フランスでも勉強。「古里に本場の味を伝えたい」と、現在の地でパン屋を開店する決意をした。
 真里さんは、「幼い頃、夕食が遅くなっても、両親がお客様と楽しそうに話すのを聞き耳を立てていたが、それが私も嬉しかった」と商いの魅力を話す。
 パン屋の開店は、今年秋を予定している。

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