今治
文化
2019.10.12
55年前の東京五輪を撮影
785号3ページ
武下さん「聖火に心打たれた」
帰郷後は写真店経営
55年前の10月、日本中が沸いた東京オリンピックの開会式や試合会場へ行き、写真を撮った思い出を懐かしんでいる人がいます。その人は、波止浜在住で写真店を経営する武下巧さん(77)です。
当時は東京で会社員をしていました。カメラが好きで、オリンピックを撮りたいと、当時も抽選だった開会式のチケットに応募するも落選。知り合いの中で唯一当たった同僚に頼み、プレミア付きでチケットを譲ってもらいました。
試合のチケットも入手困難で、陸上や水泳の前売り券発売当日に徹夜で並んだりして、何とか手に入れました。
念願の夢が叶い、自分の目で見た景色は「世界各国の選手の行進、国同士の戦い、本当に最高だった」と武下さん。その中でも鮮明に覚えているのは、開会式前後の天気でした。どしゃぶりの雨は夜中まで続きましたが、国立競技場で行われた開会式の朝、雲一つない秋の晴天に変わりました。青空の下、オレンジ色に煌々と燃える聖火に、ひときわ心を打たれました。
水泳を観戦した時には、オーストラリアの英雄で、メルボルンとローマオリンピックの水泳金メダリスト、マレー・ローズ選手にサインをもらい、今でも大事に保管している武下さん。
オリンピックが終わると会社に勤めながら東京写真専門学院で写真を学びました。帰郷後は「写真の店タケシタ」を開業しました。
今年はしまなみ海道20周年記念に写真集「海の時刻」を出版しました。写真集には、武下さんが40年撮り続けた中で、特に気に入りの作品たちが集められています。
「来年のオリンピックのチケットは、落選しましたが、テレビで観戦したい」と話しています。